電力発電とは?
発電と一口にいっても、蒸気ボイラーのように100年以上の歴史を持つものもあれば、風力タービンのように新しい技術を用いて電気をつくるものもあります。実のところ、蒸気ボイラーや風力タービンというのは、かなり古くからある発電技術といってもよいかもしれません。当初は機械を動かしたり、穀物を砕いたりするために発明されたもので、今でもそのような用途に使われてもいますが、現在は主に電気をつくるために使用されています。
ほとんどの発電装置は、オルタネーターの内部で機構を回転させて電気を生成しています。その機構がどのように回転するかは、使用する技術によって異なります。
電気はどのようにしてつくられる?
発電所や発電機によってたくさんの電力がつくられています。先ほど、回転運動がオルタネーターに伝達され、オルタネーターがその運動を電気に変換すると説明しましたが、具体的にはどのような仕組みなのでしょうか?
オルタネーターは、電気モーターとよく似ています。電気モーターは、電気を使ってローターを回転させますが、オルタネーターの場合はその逆で、電気を使って動きをつくり出すのではなく、動きを使って電気をつく出します。実際、多くのモーターは即席のオルタネーターとして機能することができます。
オルタネーターは、固定子(ステーター)と回転子(ローター)で構成されています。ローターはオルタネーターの内部で回転し、磁場を生成するように設計されています。ステーターは基本的に、中空の鉄心の周りに多数の銅製の巻線を巻いた箱です。ローターがステーター内で回転すると、その磁場も回転し、磁場の回転がステーターの巻線内に電流を発生させます。その電流は集められ、電力網に送られます。
発電機の仕組みは?
発電機は、レシプロエンジンとオルタネーターを中心に構成された、いわゆる小型の自己完結型発電所です。エンジンとオルタネーターは通常、1つの筐体にまとめられており、必要な電力量に応じて、トラクタートレーラーほどの大きさからスーツケースほどの大きさのものもあります。ディーゼル、ガソリン、バイオ燃料、天然ガスなど、さまざまな燃料に適したエンジンを搭載した発電機があります。
大型の発電機は、様々な用途や産業で使用されています。発電機には、一次電源としての役割と、非常用電源としての役割があります。例えば、電力網が整備されていない地域に展開する軍事基地では、必要な電力すべてを発電機でまかなっています。また、いかなる場合も停電が許されない建物においては、停電に備えて非常用の発電機を設置しています。データセンターや病院などがその例です。
発電所の種類
発電所の種類は多く、さまざまな技術が使用されています。レシプロエンジン(内燃機関と呼ばれることもある)、蒸気タービン、ガスタービン、水力タービン、風力タービン、地熱、原子力などがその代表例です。
水力発電所や風力発電所とは?
水力発電所と風力発電所は、燃料を使わずに風と水の流れだけを利用して発電するという点で、技術的には類似しています。
また、どちらも外部のタービンブレードを回転させて、オルタネーターの回転軸にトルクを与える仕組みになっています。例えば、米国のフーバーダムには有名な水力発電所があり、ダム内を流れる水の位置エネルギーを利用して大量の電気を生み出しています。
風力タービンの場合は、タワーごとに数枚のタービンブレードとオルタネーターが設置されており、風のエネルギーを取り出して電気に変換します。
太陽光発電所とは?
太陽光発電とは、太陽光を利用して太陽光パネル内のシリコンセルを活性化させることで電気をつく出す発電方法です。太陽の光がシリコンセルに当たると、シリコンに含まれる原子から電子が飛び出します。セルは、電子が一方向にしか移動できないように設計されているため、セルの電子コレクターを電気負荷に接続すると、電子が整列してセルから電気負荷に移動し始めます。そのときに、電流が発生するのです。
太陽エネルギー技術は、蒸気タービンを備えた集光型太陽熱発電所にまで拡大しています。塔の周囲に鏡を設置し、鏡に反射した光を塔の上部にある受光器に向けて照射するという構成があります。虫眼鏡で太陽の光を集めて火を起こすようなイメージです。塔の最上部には蒸気ボイラーがあり、そこから高温の蒸気が地上の蒸気タービンに送られるというかたちです。
地熱発電所とは?
地熱発電所では、地中深くまで配管が伸ばされ、近くのマグマから放出される熱によって配管内の水が温められます。水は蒸気に変わり、その蒸気を利用して蒸気タービンとオルタネーターによって電気が生成されます。地熱によって水が蒸気に変わる例は、ワイオミング州のイエローストーン国立公園にある多くの熱間欠泉に見られます。
ガス焚き火力発電所とは?
ガスタービンを使用したガス焚き火力発電のプロセスは、次のような流れになります。
- 空気がコンプレッサーに吸い込まれ、圧縮される。
- 圧縮された空気は燃焼器に導かれ、燃料と混合されて点火される。
- 燃焼によって加圧されたガスが、タービンブレードを回転させる。
- レシプロエンジンと同様に、回転の動きがオルタネーターに伝達され、電気に変換される。
ジェットエンジンは非常によく似た方法で動作しますが、違いは、トルクがファンブレードを回転させてジェットを推進させる点です。
ディーゼル焚き火力発電所とは?
ディーゼル焚きの火力発電所は、他の発電所に比べて発電能力が比較的小さいのが特徴です。多くの場合、レシプロエンジンが使用されます。これらのレシプロエンジンは、ちょうど自動車のエンジンのようなものです。
- 燃料が噴射されると同時に、空気がコンプレッサーに入る。
- 空気と燃料の混合物が燃焼することで、ピストンが上下する。
- ピストンに連結されたクランクシャフトによって回転運動が生成される。
- 回転運動はオルタネーターに伝達され、電流に変換される。
レシプロエンジンを使った発電所では、ディーゼルだけでなく天然ガスや重油など、さまざまな燃料を使用することができます。
石炭火力発電所とは?
石炭火力発電のプロセスは、次のような流れになります。
- 燃料を燃焼させ、ボイラー内の水を加熱する。
- ボイラーで加熱された水が蒸気になる。
- 蒸気が蒸気タービンのブレードを回転させる。
- 回転運動がオルタネーターに伝達され、電気が生成される。
原子力発電所でも発電のプロセスは同じですが、燃料の燃焼の代わりに、ウラン原子の核分裂による熱で水を沸騰させます。
原子力発電所とその仕組みについて
原子力発電所における発電プロセスは、蒸気タービンを使用した発電方法と基本的には同じですが、燃料を燃焼させる代わりに、ウラン原子の分裂による熱で水を沸騰させます。
原子力発電所には、核分裂を行う原子炉が1つ以上設置されています。大きなウラン原子が分裂して小さな原子を形成する過程で膨大なエネルギーが放出されます。ウランは、酸化ウランのペレットを燃料棒と呼ばれる密閉された金属管に積み重ねた形で原子炉に運ばれます。燃料棒は水で満たされて加圧された大きな容器(原子炉容器)に挿入されます。核分裂が始まると、燃料棒が原子炉容器内の水を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気で、蒸気タービンと電気オルタネーターのセットを回して電気を生成します。
化石燃料を一切使用しないため、原子力発電所から二酸化炭素が排出されることはありません。しかし、放射性物質を多く含む使用済み核燃料棒が発生し、その処理方法は誰にもわからないのが現状です。
2021年現在、米国では57の発電所に約94基、全世界では約450基の原子炉が設置されています。
コンバインドサイクル発電所
蒸気タービンは、ガスタービンの排熱を利用して蒸気をつくる「コンバインドサイクル」発電所に、ガスタービンに併設するかたちで利用することができます。ガスタービンの排熱を利用して、さらに電気をつくるため、コンバインドサイクル発電所はシンプルサイクル発電所よりも効率が良く、高出力であることが特徴です。
さまざまな発電技術の利点
異なるタイプの発電所や発電技術には、それぞれ長所と短所があります。
原子力発電所は、少ない燃料で多くの電力を生産し、排ガスもほとんど出しませんが、核廃棄物はいまだに解決されていない大きな問題です。
ガスタービンは蒸気タービンに比べて排出量が少なく、効率も良いのですが、メンテナンスに費用がかかる傾向があります。また、燃料としては天然ガスが一番適しているのですが、どこでも入手できるわけではありません。
レシプロエンジンは柔軟性に優れています。クイックスタートおよびクイックストップ機能を備えており、さまざまな燃料で動作し、非常に効率的で、製造や保守にかかるコストも比較的低くなります。
風力タービンやソーラーパネルは、直接排気ガスを出さず、燃料も必要としませんが、その出力は変動しやすく、風のない日には大量の電力を生産することができないなど、出力が予測できないことがあります。
未来の世代のために、よりクリーンな発電と排出量の削減を求める世界的な声が高まる中、クリーンな再生可能エネルギーへの移行が進んでいます。多くの風力発電所や太陽光発電所が電力網に接続されている中で、それら発電所の変動性を補うために、迅速に起動・停止できる柔軟な発電所を十分に確保することが重要です。ガスタービンやレシプロエンジンはこのような用途に適しており、電力会社の間で人気の高い選択肢となっています。
発電用のエネルギー源
すべての発電システムや発電所は、何らかの形で得られるエネルギーを電気に変えることによって機能します。
ソーラーパネルや風力発電所は、太陽の光や風といった環境中のエネルギーを電気に変換します。また、水力発電所では、ダムによってせき止められた水の位置エネルギーや河川の運動エネルギーを利用して発電します。風力、太陽光、水力からのエネルギーは、天候に左右されることはあってもその供給源は常に補充されるため、再生可能であると見なされています。
他の発電技術は、エネルギー源として燃料を必要とします。燃やすことができるものであれば基本的には何でも、発電用の燃料として利用されてきました。都市ゴミ、古タイヤ、下水道ガス、トウモロコシの皮、産業廃棄物などを燃料とする発電所もあります。しかし、再生可能でない電力のほとんどは、石炭、天然ガス、ディーゼルなどの石油留分を含む化石燃料をエネルギー源としています。
バイオ燃料はカーボンニュートラルであることから、ますます燃料としての重要性が高まっています。カーボンニュートラルというのはつまり、バイオ燃料が燃焼するときに放出される炭素は化石由来のものではないということです。バイオ燃料は、エネルギー作物や農業副産物、あるいは使用済みの揚げ油などの有機物から作られています。バイオ燃料には、固体、液体、気体などの形態があり、発電用途に応じてさまざまな使い方ができるようになっています。たとえば、バイオディーゼルは広く使用されているタイプの液体バイオ燃料のひとつです。